リトアニアの旅 4日目 ーカウナス【中編】

投稿日: 2025年10月19日 00:06

リトアニアの旅 4日目 ーカウナス【中編】

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【TRAVEL #3】 カウナス:歴史と民族が交差する場所 /Kaunas: Where History and Folklore Merge (day-3 in Lithuania)

カウナス・モスク

カウナス・モスク


Kepuklėlė Kimboでひと息ついたあと、
少し足をのばして『カウナス・モスク(Kauno mečetė)』へ。

静かな住宅街を抜けると、
木々のあいだから青い屋根の建物が顔をのぞかせます。
リトアニアでは珍しいイスラム教の礼拝堂で、
その丸いドームとミナレットが、
どこか異国の空気を漂わせていました。
建物の横には、絨毯のような模様が敷かれたスペースも。
どうやら、礼拝の際に屋外で使われる場所のようです。

中には入れませんでしたが、
朝の光を受けたモスクの外壁が淡く輝いていました。

『 旅メモ 』

カウナス・モスク(Kauno mečetė / Kaunas Mosque)

 住所:Totorių g. 6, Kaunas, Lithuania
 建設:1930年
 建築様式:モダン・イスラーム建築(アールデコの要素を含む)
 見どころ:
 ・リトアニアに現存する唯一のイスラム礼拝堂。
 ・1930年、リトアニア大公ヴィータウタス即位500周年を記念して建てられた。
 ・第二次世界大戦後は倉庫として使われたが、独立回復後に
  再び礼拝が再開された。

杉原千畝記念館(Sugihara House)

杉原千畝記念館(Sugihara House)

モスクをあとにして、さらにV. Mykolaičio-Putino 通りを歩くと、
坂の突き当たりに小さな階段が見えてきます。
その手前には「杉原千畝記念館」を示す案内板が立っていました。

矢印に従って階段を上がり、上りきって右へ進むと、
木々のあいだから淡いクリーム色の建物が見えてきました。
ここが、『杉原千畝記念館(Sugihara House)』です。

静かな住宅街の中にひっそりと佇むその家は、
どこか温かく、そして凜とした空気をまとっていました。
玄関の前には小さな日本の国旗が掲げられ、
入り口の横には杉原千畝の名前が刻まれたプレートが
静かに光っています。

窓越しに見える展示パネルや写真、
そして当時使われていた執務机の一部が目に入りました。

この場所で、彼は何千人ものユダヤ人に「命のビザ」を発給し、
絶望の中にいた人々に希望をつないだのだと思うと、
その重みを改めて感じました。


『 旅メモ 』

 杉原千畝記念館(Sugihara House / Sugiharos namai)

 住所:Vaižganto g. 30, Kaunas, Lithuania
 開館時間:火〜土 10:00–17:00/日 10:00–15:00(月曜休館)
 見どころ・歴史:
  ・第二次世界大戦中、在カウナス日本領事館で外交官として
   勤務していた杉原千畝が、ナチスの迫害から逃れようとする
   ユダヤ人に「命のビザ」を発給した旧領事館兼自宅。
    1940年夏、この家の2階の執務室で、わずか1か月足らずの間に
    約6,000人分のビザを発行した。
  ・独立後に修復され、現在は記念館として一般公開。
  ・内部には当時の執務室の再現や、実際のビザ、写真資料などが展示されている。
  ・館内では日本語のパンフレットも用意されており、日本からの訪問者も多い。
  ・周辺の住宅街はとても静かで、地元の人が散歩する姿も見られる。
  ・杉原千畝はリトアニアでは“Chiune the Humanitarian(人道の人)”として
   敬愛されている。

ラミベス公園

ラミベス公園

記念館をあとにして、静かな住宅街を抜けると、
緑の木々に囲まれた『Ramybės Park(ラミベス公園)』にたどり着きました。
ここはかつて、墓地として使われていたようです。

 その為か、入り口を入ると、古い石碑や十字架が点々と並び、
「Old Cemetery(旧墓地)」であったことを物語っています。
リトアニア独立戦争の兵士、第一次・第二次世界大戦の犠牲者、そしてポーランド軍
やロシア兵など、さまざまな時代の人々が眠る場所でもあります。

 園内を歩くと、白い十字架や戦没者を追悼する碑、古い墓石が
静かに並んでいました。
とても静かな公園ですが、色んな背景を知ってしまうと
歩いていいのかな?と疑問に思いました。

『 旅メモ 』

 Ramybės Park(ラミベス公園 / 旧墓地公園)

住所:Ramybės Parkas, Kaunas, Lithuania
概要・歴史:
 ・19世紀に設けられたカウナス最大の墓地を再整備して造られた公園。
 ・第一次世界大戦・独立戦争・第二次世界大戦の犠牲者、詩人・聖職者
軍人などの墓が残る。
 ・ソ連時代には閉鎖・一部破壊されたが、独立後に修復され
「平和と記憶の場所」として再開。
見どころ:
 ・園内には「リトアニア独立戦争の記念碑」「無名戦士の墓」「白い十字架群」
  などが点在。
 ・春は桜、秋は黄葉が美しく、写真家にも人気のスポット。
 ・“Ramybė”はリトアニア語で「安らぎ」。その名の通り、
  過去と現在が静かに共存する場所。

二つのドーム屋根

二つのドーム屋根

 ラミレス公園を歩いていると、
木々の間から二つのドーム屋根が見えてきました。

それは、『カウナスのハリストス復活正教会』と、そのすぐ隣に建つ
『カウナス生神女福音大聖堂』。
どちらも東方正教会の教会ですが、実はこの二つには深いつながりが
あります。

1862年に建てられたハリストス復活教会は、
長い間この地域の正教徒の中心として祈りの場となってきました。
その後、信者の増加に伴い、1935年に新たな拠点として建てられたのが、
生神女福音大聖堂です。

手前にある小さな教会――ハリストス復活正教会は、
1862年に建てられたカウナス最古の石造りの正教会のひとつ。
かつて墓地の中に建てられ、
長い間この地の信仰を静かに見守ってきた建物です。

カウナス生神女福音大聖堂

カウナス生神女福音大聖堂

1935年に完成したカウナス生神女福音大聖堂。
五つの玉ねぎ型ドームが特徴で、モダニズム建築が並ぶカウナスの中でも
ひときわ存在感を放っています。
 外観はウラジーミル・スーズダリ様式を現代的に取り入れた
ビザンチン・リバイバルのデザインで、遠くからでもその丸屋根がよく目立ちます。

カウナス生神女福音大聖堂の中は・・

中央に、東方正教会特有のイコノスタス(聖障)が立ち、
金と青を基調にしたイコンが整然と並んでいます。
ひとつひとつの聖像が物語を語るように配置されています。

奥には16世紀ごろの聖母マリアのイコンが大切に祀られ、
天井には精巧なフレスコ画が。
光の角度によって人物たちが浮かび上がるように見えます。


『 旅メモ 』

〇カウナスのハリストス復活正教会(Kauno Kristaus Prisikėlimo cerkvė)

建設年:1862年
場所:ラミベス公園(Ramybės parkas)南部、生神女福音大聖堂の隣
宗派:東方正教会(ロシア正教会系)
特徴・歴史:
  ・墓地の敷地内に建てられたカウナス最古の石造りの正教会。
  ・1935年まで府主教座大聖堂(メトロポリト大聖堂)として機能。
  ・ソ連時代に閉鎖され公文書館として使われたが、2000年代に修復。


〇カウナス生神女福音大聖堂(Kauno Apreiškimo Švč. Dievo Motinai soboras)

建 設 年:1935年
建 築 家:エドムンダス・フリカス(Edmundas Frykas)
建築様式:ビザンチン・リバイバル様式(ウラジーミル・スーズダリ様式を現代的に解釈)
歴 史:
    ・カウナスが「臨時首都」だった1930年代に、正教徒の中心的な大聖堂として建設。
   ・五つの玉ねぎ型ドームが並び、遠くからでも目を引く外観。
   ・内部はフレスコ画やモザイクで彩られ、1530年頃の聖母マリアのイコンを所蔵。

カウナス駅

カウナス駅

街の中心から少し歩くと、
白い外壁が印象的な『カウナス駅(Kaunas Railway Station)』が見えてきました。

杉原千畝の想いが残る場所

杉原千畝の想いが残る場所

 駅のホームには、杉原千畝さんのモニュメントと説明パネルが設置されています。
第二次世界大戦中、彼が発行した「命のビザ」によって、
多くのユダヤ人がこの駅から列車に乗り、日本へと旅立ちました。

1940年、領事館閉鎖の命令を受けた杉原さんは、
列車が発車する直前までビザを書き続け、
最後の一枚を渡したとき、こう言葉を残したといわれています。
 「これ以上、書くことができません。」

そして後に、彼はこう語っています。
 「私は彼らにビザを与えたのではない。人間として当然のことをしたまでです。」

その静かな言葉に、
どれほどの覚悟と優しさが込められていたのでしょうか。

カウナス駅は、19世紀に建てられ、戦後に再建された歴史ある駅です。
白いネオクラシックの建物は美しい駅です。
また、近くの橋からホーム全体を見渡すと、
また違った景色が楽しめます。

『 旅メモ 』

 カウナス駅(Kaunas Railway Station) 

所在地:M. K. Čiurlionio g. 16, Kaunas, Lithuania
開業:1862年(1948年再建)
建築様式:ネオクラシック様式
見どころ:
 ・杉原千畝モニュメントと命のビザ記念パネル
 ・ホーム全体を見渡せる橋(撮影スポット)
 ・白い外観が美しい歴史的駅舎
 ・映画『杉原千畝 スギハラチウネ』(2015)にも登場する駅。
 ・ここから多くの人々が“自由への列車”に乗り込んだと伝えられる。