リトアニアの旅 4日目 ーカウナス【後編】

投稿日: 2025年10月18日 22:52

リトアニアの旅 4日目 ーカウナス【後編】

ネムナス島

ネムナス島

カウナス駅をあとにして、
ネムナス川沿いを歩いていくと、広々とした『ネムナス島(Nemuno sala)』が
見えてきました。

島の入り口には、近代的な建物――ジャルギリス・アリーナ(Žalgirio Arena)が
立っています。ここはリトアニアを代表するバスケットボールチーム
「Žalgiris Kaunas」の本拠地でもあり、
試合の日には多くのファンでにぎわうそうです。

アリーナを過ぎて島の奥へ進むと、
木々に囲まれた「カウナス日本友好公園(Kauno ir Japonijos Draugystės Parkas)」に
たどり着きます。

桜の木や石碑が並び、杉原千畝さんをはじめ、
日本とリトアニアの絆を伝える記念の場所です。

島へ渡るための橋

島へ渡るための橋

 また、島へ渡るための橋はいくつかあり、それぞれに特徴があり…

① シモナス・ダウカンタス橋(Simono Daukanto tiltas)

旧市街側とネムナス島をつなぐ歩行者専用の吊り橋。
リトアニアの国章「グディミナスの柱」をモチーフにしたデザインが印象的で、
夜はライトアップされ、川面に映る光景がとても美しいスポットです。


② Bridge-Plaza(ブリッジ・プラザ)

近年完成した新しいデザイン橋で、
市街地とネムナス島公園を結ぶ歩行者・自転車専用ルート。
中央には“プラザ(広場)”のような空間があり、
人々が集まり景色を楽しむことができます。
モダンな建築デザインが特徴で、夜のライトアップも見どころです。


③ ネムナス川橋(Nemuno salos tiltas)

ネムナス島の南側に位置する橋で、車両通行も可能。
市街地と周辺の住宅地をつなぐアクセスルートとして重要な役割を持ちます。
観光というよりは、地元の人の日常に根づいた橋です。


『 旅メモ 』

  ネムナス島(Nemuno sala)

場所:カウナス中心部、ネムナス川の中洲
特徴:
 ・自然豊かな公園と遊歩道
 ・川風が心地よい散歩スポット
 ・展望エリアからカウナスの街並みを一望できる

地下道、 Birštono g. požeminė perėja

地下道、 Birštono g. požeminė perėja


ネムナス島をあとにして、Nemuno salos tiltas橋を渡ると、
静かな川風の先にカウナスの旧市街が見えてきました。

橋のたもとには、歩行者と自転車を結ぶ地下道、
Birštono g. požeminė perėjaがあります。

白い壁に光が反射するすっきりとした通路で、
通りにはバラや季節の花が並び、
週末には音楽の演奏や小さな展示が行われるそうです。

その入り口には、なぜか年老いたウサギのオブジェがちょこんと座っていて、
少し不思議で、どこか愛らしい存在でした。

聖ペテロ&パウロ大聖堂

聖ペテロ&パウロ大聖堂

地下道を抜けて旧市街へ。
最初に訪れたのは、赤レンガ造りの聖ペテロ&パウロ大聖堂
(Kauno Šv. apaštalų Petro ir Povilo arkikatedra bazilika)。

旧市街の中心にあるこの教会は、15世紀後半に建てられたゴシック建築の代表作で、
カウナスで最も古いカトリック教会のひとつです。

光が満ちる大聖堂の中で

光が満ちる大聖堂の中で


中へ入ると、高い天井と白い壁、そしてやわらかな光が印象的でした。
石造りの柱が並び、静かな祈りの時間が流れています。
天井の装飾や祭壇の金色の細工は見事で、
長い年月を経ても大切に守られてきたことが伝わってきました。

かつては要塞教会としての役割も持ち、
戦火や洪水を乗り越えて今に残る、カウナスの信仰と歴史の象徴です。
バロック様式の祭壇と、オルガンの重厚な音色がこの教会の特徴でもあります。


『 旅メモ 』

 聖ペテロ&パウロ大聖堂
 (Kauno Šv. apaštalų Petro ir Povilo arkikatedra bazilika)


住所:Vilniaus g. 1, Kaunas 44281, Lithuania
建設年:15世紀後半(1470年代頃)
建築様式:ゴシック様式(後にルネサンス・バロックの要素を追加)
見どころ:
・高さが20mを超える内部空間と美しい装飾天井
・バロック様式の主祭壇
・歴史的なパイプオルガン(19世紀製)
・カウナス司教区の中心であり、 ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世も1980年代に訪れた場所。
・外観の赤レンガはカウナスで焼かれた地元産。


カウナス市庁舎

カウナス市庁舎


 次に向かったのは、白い塔が印象的なカウナス市庁舎(Kauno rotušė)

その端正な外観から、地元の人々には“ホワイト・スワン(白鳥)”の
愛称で親しまれています。
建設は16世紀。ゴシック、バロック、そしてクラシック様式が混じり合った独特の
美しさを持ち、現在は結婚式場としても利用されています。
広場を囲むカフェのテラスからは、
ゆっくりとした時間が流れる旧市街の雰囲気を味わえます。


『 旅メモ 』

 カウナス市庁舎(Kauno rotušė)

住所:Rotušės a. 15, Kaunas 44280, Lithuania
建設年:1542年(現存建物は18世紀に改修)
建築様式:ゴシック+バロック+クラシック折衷様式
見どころ:
 ・高さ53mの塔から旧市街を一望
 ・内部は現在、婚礼ホールおよび市立博物館として公開
 ・“白鳥”の愛称は、塔の優雅な形と白い外壁から。
 ・地下にはかつて牢獄があった。

聖フランシス・ザビエル教会 / ペルクーナスの家

聖フランシス・ザビエル教会 / ペルクーナスの家

市庁舎のすぐそばにあるのが、
『聖フランシス・ザビエル教会(Church of St. Francis Xavier)』

白く輝くバロック様式の外観が印象的で、
17世紀後半にイエズス会によって建てられました。
内部はやわらかな光に包まれ、祭壇や彫刻が美しく整えられています。

『 旅メモ 』

聖フランシス・ザビエル教会(Church of St. Francis Xavier)

住所:Rotušės a. 8, Kaunas 44280, Lithuania
建設年:1666年〜1720年
建築様式:バロック様式
見どころ:
・シンメトリーの美しい白いファサード
・内部の精巧な祭壇と装飾天井
豆知識:
・ソ連時代にはスポーツホールとして使われていたが、
1990年代に再び教会として復元。


 旧市街の石畳を歩くと、赤レンガの重厚な建物が見えてきます。
それが、15世紀に建てられた『ペルクーナスの家(Perkūno namas)』

リトアニア語で“雷神の家”を意味し、かつて商人ギルドの建物だったと
伝えられています。現在は展示館として公開され、
カウナスの中世史とバルト神話の世界を垣間見ることができます。


『 旅メモ 』

  ペルクーナスの家(Perkūno namas)

住所:Aleksoto g. 6, Kaunas 44280, Lithuania
建設年:15世紀末
建築様式:ゴシック様式
見どころ:
 ・複雑なレンガ造りのファサードと尖塔窓
 ・館内では中世商人の暮らしを再現した展示
豆知識:
 ・“雷神ペルクーナス”の名は、建物内に偶然見つかった像に由来。
 ・19世紀には詩人アダム・ミツキェヴィチがこの館で教鞭をとっていた。

カウナス城

カウナス城


 そして旅の締めくくりに訪れたのが、
緑の芝生に囲まれた『カウナス城(Kauno pilis)』

13世紀に建てられた、リトアニア最古の城のひとつです。
レンガ造りの塔が青空に映え、周囲には「Vytis(騎士の像)」や
「Kaunas」サイン、音楽を奏でる彫像などが並びます。
戦いの時代を超えて、いまは静かな公園として人々に愛される場所に
なっています。


『 旅メモ 』

カウナス城(Kauno pilis)

住所:Pilies g. 17, Kaunas 44275, Lithuania
建設年:13世紀半ば(1360年頃)
建築様式:レンガ造りのゴシック要塞
見どころ:
 ・保存された塔の展望台
 ・中世の展示や考古資料
 ・ヴィータウタス大公が一時期ここを防衛拠点とした。
 ・春には周囲の芝生で音楽フェスティバルが開かれる。

ストリートアート

ストリートアート


 城のそばを歩いていると、
壁に描かれたカラフルな「Grafitti Inkilas(グラフィティ・インキラス)」が
目に入りました。

リトアニア語で「巣箱」を意味するこの作品は、街の中に
“自由に羽ばたく鳥たち”をイメージして描かれたアートなのだそうです。

カウナスでは、こうした壁画やストリートアートが街のあちこちにあり、
歴史ある建物と現代の感性が、自然に調和しているのを感じます。

観光のあとは

観光のあとは


 ランチには、CASA DELLA PASTA(Laisvės al. 27)でパスタをいただきました。

 外のテーブルに座り、心地よい風を感じながら食べる一皿は、
いつもより少し特別な味がしました。
通りを行き交う人々の穏やかな声が、BGMのように流れ、
旅の終わりにぴったりの、静かで満たされた時間でした。

食後は、ゆっくりと街を歩きながら、
カウナスの最後の風景を目に焼きつけ
車でカウナス国際空港へ向かいます。

カウナス国際空港へ

カウナス国際空港へ


 車を走らせること約30分、レンタカー会社へ。
返却手続きは驚くほど簡単で、
指定された場所に車を停め、キーをボックスに入れるだけでした。

空港には少し早めに到着したので、
コーヒーを飲みながら出発までの時間をゆっくりと過ごしました。


こうして4日間のリトアニアの旅はおしまい。
訪れた場所の一つひとつが、
歴史を語り、街の静けさ、澄んだ空気、そしてどこか懐かしい温かさ。
それらがこの旅の記憶として、今も心の中に残っています。

今回訪れたのは、バルト三国のひとつ――リトアニア。

バルト海を北へとたどれば、
まだ訪れたことのないラトビア、そしてエストニアの街々が待っています。

いつかまた、旅することができたらいいな。